前回の記事は、Yahoo!ニュースの前半を解説していました。
今回は、この記事の後半を解説したいと思います。
さて、抗生物質や抗菌剤ってちゃんと説明できますか?
このニュースの後半では、こんな記載がされています。
医療機関で処方される抗生物質に対しても、誤解が多い。国立国際医療研究センター病院が今年8月に実施した調査では、約半数が「ウイルスをやっつける」と誤解しており、効果がないと正しく認識していた人は2割を切った。
えっ!? 抗生物質はウイルスを殺さないの?
風邪をひいたら、お医者さんに抗生物質くださいってお願いしていたよ・・・。
なんて方も多いのではないでしょうか?
抗生物質について、分かりやすく解説したいと思います。
1.ウイルスと細菌と真菌(カビ)の違いについて
まずは、混同しやすい、ウイルスと細菌と真菌(カビ)の違いをまとめます。
こちらは製薬会社のサイトに分かりやすく、説明されていたので
まずは、そちらを参照しましょう。
あまり詳しく理解できないかもしれません。でも大丈夫です。
ここでは、今まで皆さんが『微生物』、『ばい菌』、『病原菌』などと
表現していた、グループの中にも、全然、大きさや構造が違う種類が
いくつかあることを、覚えておいてください。
当然ですが、違う種類の『病気の基』に対して、治療法は異なってくるのです。
2.抗生物質の作用機序について
それでは、抗生物質がどうやって、体に良い作用をするのか確認しましょう。
抗生物質の作用機序を大きく分けると以下の3通りです。
- 細菌のDNAやRNAを作らせない
- 細菌のタンパク質を作らせない
- 細菌の細胞壁を作らせない
抗生物質を飲んで、人のDNAやタンパク質が作られなくなったら大問題です!
細菌を倒す前に、副作用でとんでもないことになります。
でも、細菌と人は違う生き物なので、DNAやタンパク質を作る『過程』が異なります。
抗生物質は、細菌に特有の『過程』に働くことで、細菌のDNAやタンパク質は
作れなくはするけど、人のDNAやタンパク質を作るのには、影響しないのです。
また、人の細胞には細胞壁がありません。(細胞膜はあります)
そのため、細胞壁を作らせない作用を持っていても、人には作用しないのです。
では、この抗生物質、ウイルスには効くのでしょうか?
人の場合と同様に、細菌とウイルスは違う生き物なので、DNAやタンパク質を作る
『過程』が異なります。だから、抗生物質はウイルスには効かないのです。
また、人の細胞と同様に、ウイルスにも、細胞壁がないので、
やはりウイルスには効かないです。
じゃあ、ウイルスのDNAやタンパク質を作る『過程』に働く薬を作れば
解決できそうですね。でもこれがとても難しいのです。
この話をするとかなり難しくなってしまいますが、一つだけお話しします。
ウイルスは自分自身で増殖することができません。
必ず、他の生物の細胞の中に入って、その生物の機能を使って増殖します。
だから、人に感染したウイルスは、人の機能を使って増殖するので、
人に影響を与えない薬を作るのが大変難しいのです。
ちなみに、細菌は自分自身で増殖するので、この点もウイルスとの大きな違いです。
3.勇気を持ってお医者さんに聞いてみよう!
さて、話は長くなりましたが、抗生物質はウイルスを殺さないことを
なんとなく理解いただけたでしょうか。
一般的に冬に流行する風邪の多くはウイルスが原因です。
これまで、風邪の時に抗生物質を処方していた理由は主に以下の4つです。
- 細菌感染が強く疑われる
- 細菌感染か、ウイルス感染か症状から見分けがつかない
- 風邪で体が弱っているので、弱った状態であとから細菌に感染するかもしれない
- 患者さんが希望するから
ところで、いままで抗生物質を処方してくれる理由を、
お医者さんに聞いたことがありますか?
ニュースの記事では、こんな記載がありました。
近年では抗生物質の乱用で、耐性を持つ菌が生まれる問題も起きているが、
処方を求める患者もいるため医療現場はなかなか変わらないという。
患者さんの意識が変われば、医療現場も変わるかもしれません。
今回、抗生物質はウイルスに効かないことを理解していただけたのなら、
次は、風邪を引いたとき、抗生物質が必要か、お医者さんに聞いてみては
どうでしょうか。
4.最後に
かつて、不治の病だと思われていた病気が、抗生物質の登場により、
感染症による死亡を著しく低下させた功績があり、
一部の方々からは魔法の薬と思われているかもしれません。
ただし、残念ながら抗生物質は魔法の薬ではなく、ウイルスを殺すことはできません!
今回は抗生物質について解説しましたが、医療に関する知識は、非常に難しいため
思い込みの情報・一昔前の情報・悪意のあるニセ情報、などが氾濫しています。
このブログでは、正しい知識を身につけるきっかけとなる情報を
引き続き提供したいと思います。
自分が受ける治療について、お医者さんと一緒になって選んでいく時代が
始まっていると思います。